執筆者の紹介

中村ともかと申します。31歳で子育てをしながら小学校の非常勤講師として勤務中です。

今年度で一度先生をやめて、先生の仕事をこのまま続けるべきか考えたいと思っています。

非正規雇用の先生ってどんな仕事をするの?

私は大学を卒業してから7年ほど、小学校の先生として働いてきました。

2年生と6年生以外の担任経験があり、主に担任業務や部活動顧問、学年会計という担当学年で使う教材をまとめて注文する仕事などをしてきました。

今は担任ではなく、授業だけを担当する先生として勤務しています。

ただし「非正規雇用として」です。

先生になるためには、大学で教員免許を取得し、教員採用試験に合格することで正規雇用されます。

もし試験に合格できなくても、教員免許さえ持っていれば各自治体の教育委員会などに講師登録をすることで先生として働くことができるかもしれないというシステムがあるのです。

実際は人手が足りていないので、ほとんど非正規雇用として先生の仕事ができます。

普通の会社だと考えられませんよね。

試験を受ける時の私は、まだ本当に先生として働きたいのか悩んでいて、試験に前向きではなかったので合格することはできませんでした。

それでも非正規雇用として働くことができると知っていたので、働き口に困ることはないだろうとあまり重く受け止めていませんでした。

こうして試験に合格しないまま、大学卒業後から小学校で働くことになりました。

仕事への不安や不満はつもるばかり…

就職当時は試験に合格しないままでもあまり困ることはありませんでした。

必死になって仕事に取り組んでいたからかもしれません。

しかし、徐々に非正規雇用であることへの不安や不満を感じるようになったのです。

私の場合、大きく2つの不安を抱えることになりました。

1つ目は、研修を受けられないことの不安です。

小学校の教員採用試験に合格した人は、1年間担任を持ちながら初任者研修を受けるというのが通例です。

初任者研修のレポート提出の多さや毎週のようにある授業のやり方指導、出張の数がとんでもなく多いことなど、その負担の大きさを目の当たりにした私は、「研修受けなくて済むならそれでいいじゃん」と軽く考えていました。

しかしその研修の差が年々大きくなっていくのを肌で感じるのです。

私は授業のやり方を誰かから教えてもらったことがありません。

最初にペアを組んだ主任の先生は「わからないことがあったら聞いて」というスタイルだったので、「何がわからないのかわからない」状態だった私はろくに質問できませんでした。

そのため、指導書と呼ばれる授業の見本になる本を見ながら毎日の授業をなんとかやり切っていたのです。

もちろん仕事に慣れてからは自分なりに考え、工夫したつもりですが、それが合っているのかはわからないままここまで突き進んできました。

そんな付け焼き刃の授業ばかりしていた私は、先生として勤務した期間は7年ですが、いまだに授業に自信がありません。

「自分の授業では子どもに伝わっていないのではないか」

そんな不安をずっと抱えながら、大変だった研修を受けてきた同僚や後輩を見ると、みんなが自信があるように見えて、教壇で授業をする自分がどんどん情けなく思えてくるのです。

2つ目は、雇用に関する不安です。

正規の先生にも異動はありますが、だいたい5年から10年で異動という目安があります。

それに対して非正規雇用の先生は、1年で異動することもざらです。

私も最初の学校は1年で異動になり、慣れ親しんだ学校を離れる寂しさで泣いてしまったことを今でも覚えています。

せっかく担任として関係を築き、特性をよく理解した子たちがいても、その子達を来年も近くで見守れるとは限らないのです。

そして異動となると子ども達だけではなく、一緒に働く先生との関係もリセットされてしまうし、次の学校の教室配置や備品状況、その学校ならではのルールなどの把握にもエネルギーを使うことになります。

その負担が大きく、異動が発表される時期になるといつも不安でいっぱいです。

では、また改めて教員採用試験を受けて正規の先生になれば良いのでは?と感じた人もいるでしょう。

確かに正規の先生になれば、先ほどの不安は解消されると思います。

それでも7年もずっと非正規雇用で働いてきたのは、今の仕事への不満がたくさんあるからなのです。

ここでは2つの不満を話します。

1つ目は、正規雇用された時に負担が大きくなる校務分掌です。

校務分掌というのは、学校全体の仕事を先生で分担して取り組む仕事です。

担任業務と直接関係がないものも含まれるので、表には出ないけれど大変な仕事というのがここに隠れています。

その仕事の配分が、正規か非正規かによって全然違うのです。

具体的にいうと、非正規の私は多くて3つの仕事で、数も仕事の負担も少ないのに対し、正規の先生は7つほど仕事を抱えていることがあります。

その中でも負担の大きい仕事が2つほど入ってくることもあるのです。

担任業務だけでも大変なのに、それとは別で大変な仕事が舞い込んでくるとなれば、ますます余裕がなくなります。

2つ目は、自分が休んだ場合の授業についてです。

私は今、担任ではなく授業だけを受け持つ先生として勤務していますが、子どもの発熱で学校を休まなければならないことが多々あります。

その時に休むことはできても、その日にやる予定だった授業を代わりにやってくれる先生がいるわけではありません。

私が受け持っている授業は、私にしかできないのです。

会社の仕事で例えるなら

「この仕事はAさんにしか出来ないけど、Aさんお休みだから進まないね」

という状況なのです。

休んだ人のフォローを当たり前に出来る会社がほとんどだと思いますが、学校はそうではないという事実に、もどかしさを感じてしまいます。

さらに、休んで進まなかった授業は、自分の空き時間に振り替えてまた進めていくしかないのです。

急な時間割変更で子どもや担任の先生にも迷惑をかけるし、休むことで自分にかかる負担を考えると、休む前から嫌な気持ちになってしまいます。

そんな不安や不満が、自分の心を蝕んでいき、先生を目指していた頃や先生になったばかりの頃の自分の気持ちを忘れてしまいそうになるのです。

先生の働き方改革に望むこと

せっかくやりたいと思って始めた仕事でも、忙しさでいっぱいになり、休む時に休んだ後のことを心配するようになってしまっては、いつか無理が祟って身体に影響が出てくると思います。

実際に、1年の間に調子を崩して療養休暇に入る先生の数は年々増えています。

そうならないためにも、教育の世界に根強く残る

『なんでも1人でやる文化』

『新しい仕事が増えるのに、今までの仕事は減らないこと』

が解消されていくことを期待したいです。

正直、個人で出来る仕事の効率化には限界があるし、ほとんどの先生はすでに取り組んでいるものばかりです。

地域によっては学年担任制として、決まった期間で担任をローテーションする仕組みを導入している学校や、校長の先導で仕事を減らす取り組みをしているところもあります。

それも確かに素晴らしいですが、先生たちが平日にもっと自由に休めたり、余裕をもって子ども達と向き合えたり出来るように、国が主体となってどんどん仕事の内容を精査して欲しいです。

先生の数や、先生の仕事にゆとりがあってこそ、学校現場は質の良い教育を提供できると思います。

先生の仕事にもどかしさを感じているあなたへ

「先生は人手が足りていない」

「自分が辞めたら周りに迷惑がかかるのではないか」

ついそうやって考えてしまいますよね。

しかし、そうやって考えていることで、自分を追いつめていませんか?

悩んでしまうほど先生の仕事がつらい時は、少し先生の仕事から距離を置いてみましょう。

一度離れて冷静に考えてみたり、非正規になって勤務時間を減らしてみたりすることも一つの方法だと思います。

今の向き合い方から少し離れたら、「やっぱり先生やりたいかも」と思えるかもしれません。

「やりがいはあるから辞めるのは惜しい」

と考えているなら、自分を見つめ直す時間も必要ですよ。

コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です